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コラム(繊維・縫製・アパレル
四方山話)



「糸の太さは、なぜデニールや番手なのか? (糸の直径について)」 (2013.07.07更新)


糸の太さを“直径○○μm”という表記していることは、まず滅多に見かけることはない。通常デニールやテックス、番手を使っているが、メートルで表記する方法とデニールや番手で表記する方法で、いずれがわかりやすいかなど疑問を感じることは無いだろうか?
しかも、なぜデニールや番手を使い分けているのか、疑問をもつことはないだろうか?(テックスという統一的な表記方法はあるが・・・)

私自身を振り返ってみると、学生時代に最初にこれらの言葉が教わった時、いくつもの呼び方があって覚えるのが面倒だと思う程度であって、その背景まで考える余裕は無かったのが正直なところだ。

特に興味深いのは、シルクなどの糸の太さをあらわす“デニール”である。その語源は、古代ローマのデナリウス銀貨にあるという話を、読んだことがある。そこから想像すると、
 ①繭玉一つで、約1300~1500mの長さがある、
 ②繭は、そもそも最初と最後では太さが異なっていること、
 ③ユーラシア大陸の中を広範囲に流通していたこと、
これら3つの要因が、貿易通貨としてのデナリウス銀貨に語源をもつ“デニール”が生まれたのだろう。

また恒重式を使う、綿番手、麻番手、毛番手は、紡績糸なのでいくらでも紡いでいけば長い糸を作ることができる。
従って綿番手や毛番手は、原料そのものの重量を一定にして、どれくらいの長さの糸ができるかというのが重要になってきたのかもしれない。もちろん綿番手(1ポンドあたり840ヤード)と毛番手(1000グラムあたり1000メートル)は、綿番手は、イギリスで綿工業が盛んだったので、ヤードポンドであり、毛織物工業は、本来イギリスの対岸にあったフランドル地方(オランダ南部からフランス北部)が本場であり、そこからイギリスへ持ち込まれ、盛んになっていったので、メートル法なのだろう。こんな所にも、デファクトスタンダード(結果として事実上標準化した基準)が隠れている。(M.K)





中国レポートその5 「中国の一般家庭」 (2013.06.16更新)

2012年11月より中国に赴任している中野実さん(SIRUBA)より中国のレポートを頂きました。
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ビジネスモデルにみる収益構造の違い」 (2013.04.09)

中小企業診断士 渡辺 孝さんより、株式会社 ファーストリテイング と株式会社しまむらの決算から、企業のビジネスモデル違いが収益構造にどのよう反映されるかというレポートを頂きました。
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中国レポートその4 「中国の新幹線」 (2013.04.09)

2012年11月より中国に赴任している中野実さん(SIRUBA)より中国のレポートを頂きました。
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にてご覧ください。






中国レポートその3 「中国政府高官の役人天国終了か?」 (2013.03.02)

2012年11月より中国に赴任している中野実さん(SIRUBA)より中国のレポートを頂きました。
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にてご覧ください。






中国レポートその2 「日本料理店にて」 (2013.02.05)

2012年11月より中国に赴任している中野実さん(SIRUBA)より中国のレポートを頂きました。
第2弾は日本料理店の繁盛から考える反日デモです。 PDF
にてご覧ください。






中国レポートその1 「中国の現状」 (2013.01.27)

2012年11月より中国に赴任している中野実さん(SIRUBA)より中国のレポートを頂きました。PDF
にてご覧ください。




静電気はいやだ!
(静電気の話)

あっ 痛っ~!・・・。ドアノブを掴もうとした時の電撃は嫌なものです。これが静電気のいたずらであることは皆さんもご存じでしょう。今年もいやな静電気の季節がやってきました。静電気は、人体への埃の吸着による健康障害、衣服の脱衣時の激しい火花の発生、電撃などの不快さ、さらには精 密電子部品の製造時の破壊や火花放電による化学プラント事故、などいろいろな問題を引き起こしています。

ポリエステル繊維に代表される一般の合成 繊維は強くて耐久性があり量産もできるので、天然繊維にとって代わる優れた特性を有する繊維として大いに使用されています。しかしその反面、吸湿 性が乏しく電気抵抗も高いため帯電しやすいという「合繊の宿命」と呼ばれる欠点があります。静電気は冬の乾燥した日、特に湿度が40%以下になると 発生しやすくなります。着衣同士や着衣と人体との摩擦,歩行時の床(絨毯)との摩擦などによって人体に静電気が蓄積されることが知られています。 歩行時にスカートやランジェリーが足にまとわりつくことは女性が日常的に経験するところで、不快であるばかりでなく、外観上も好ましくありません。

このような合成繊維による静電気の発生を防止するためには、水分を付与することが最も簡単な対処方法ですが、ポリエチレングリコールなどの界面活性剤を衣服に塗布する加工や導電性繊維の利用の試みがいろいろと行われております。ここでいう導電性繊維は、金属や金属化合物、カーボンブラックなどの導電性物質を含有する繊維で、被覆型、複合型、単一型、均一型などがあります。なお最近では、衣服に付着する花粉が問題になっていますが、これも静電気のせいです。(Y.K)



2つをくっつける
(縫製技術のすばらしさ)

縫製と聞くと、布と布を縫い合わせる家庭科の技術と思う人は多いだろう。 しかし、「接合」技術と言うとどのようなイメージになるだろうか? 例えば、鉄同士であれば溶接やリベットやボルトとナットで連結するのも接合技術で あり、木材同士であれば、釘を使ったりホゾにより嵌め込んだりすることも接合技術となる。 またプラスチック材料であれば、溶着や接着剤による接合技術がある。 これらの例であげた接合技術の特徴は、ほぼ同じような材料同士(ハードマテリアル 同士)というところに共通点がある。

しかし、布と布を縫い合わせる縫製技術はどうだろうか? 繊維製品は、縫製技術によって接合することが多い。勿論ニット製品のリンキングや接着剤による接着や熱溶着の方法もあるが、ミシンを使った縫製が量的には圧倒的に多いのは言うまでもない。 蛇足だが、接着剤や熱溶着を使った接合では、接合部分が固く着心地が悪くなってしまう。また、表面接着であり、接着面が破壊されると剥がれやすい欠点がある。 繊維製品(布)というソフトマテリアルの接合技術として見た縫製技術の最大の特徴は、ソフトマテリアル同士をソフトに接合させ、そして全体としてソフトマテリアルの特性である伸縮性や可撓性などの柔らかさを維持している点である。そして、この縫製技術を持たないアパレル製品としてホールガーメントという無縫製の技術も開発されているが、まだまだ割合としては少ない。

今までの縫製技術が、これからもまだまだ活用されていくのは明らかである。 ソフトマテリアルと言えば人体も含まれてくる。その人体の外科手術の縫合でも糸と針による縫製技術が活用されている。これも、接合部分にソフトマテリアルの特性である柔らかさを残す方法が、これしか無いからである。 縫製とは、このように他の接合技術には無い特徴を持ったすばらしい技術なのであ る。 もちろん縫製に用いるミシンは、精密機械であり、現在の自動車などを含む様々な機 械技術の礎となっているのは言うまでもない。 (M.K)



繊維と自動車
(自動車にも繊維は使われている)

最近では、繊維産業は斜陽産業と呼ばれるときが多い。それは本当なのか?と言えば間違ってるだろう。繊維産業関連の就業人口と自動車関連産業の就業人口は、ほぼ同程度なのである。意外かもしれないが繊維も裾野の広い産業であり、今でも就業人口の多い大事な産業なのである。そして、日本を代表する自動車会社といえばトヨタ自動車が思い浮かぶだろう。そのトヨタ自動車を産む母胎となったのは、豊田自動織機なのである。自動車産業の基となる機械産業は、やはり繊維機械からスタートしたのである。

ところで最近の自動車は、十年前の自動車と比べて静かになったと感じないだろうか?特に小型車が静かになったと思う。 その静かさの秘密は、やはり繊維にあるのだ。例えばエンジンの上のボンネットの裏には不織布が使われ、フロントのフロアマットも防音に一役買っている。もちろん、ドアの内側にも繊維が詰まってるのである。 自動車を構成する材料の中で、繊維の占める割合は、この十年間で重量ベースで見た増加量は僅かだが、体積ベースで見れば飛躍的な伸びを示しているのである。 そして、その繊維の使用量の増加が自動車に高級感を与えているのである。ハードマテリアルで出来ていると考えがちな自動車の高級感はソフトマテリアルで演出されているのである。(M.K)



暖かい服は、何で計測する?
(保温性の評価)

女子大生が職場へ実習に来るとき、必ず聞いている質問がある。「冬は、暖かい服が欲しいですか?」もちろん、答えはイエスである。そして、次に「暖かい服は、どうやって測定しますか?」「暖かいのなら、それは温度計で測れますか?」と聞くと、考え込んでしまうのである。

暖かい服が欲しいと思っても、その評価方法になるとあまり分からず感覚的に商品を選んでいるのである。 もちろん、暖かい服を測定するために布の布の間に何の工夫もなく温度計を入れても暖かいかどうかは分からないのは言うまでも無い。もし、温度計しか道具が無く簡易に測定するのなら、お湯を入れたペットボトルに温度計を指して、計りたい布をペットボトルの周りに巻き付けて、温度降下の時間を計るのも一つの方法である。もちろん、きちんとアパレル製品として測定するのであれば、サーマルマネキンを使ってclo値を測定する方法もある。また布帛であれば、ASTM型保温性試験機による保温性評価もある。

そして女子大生達の答えを注意深く聞いてみると、暖かい服のイメージは素材から想像する場合が多いようである。例えばダウンやカシミヤ、ウールというような素材が暖かい服を選ぶときのポイントになっているようである。しかし、断熱材の主役は空気であり、それらの素材は小さな空気のセルの間仕切り程度にしか役立ってないという話をすると、意外と驚くのである。 (M.K)



タケノコ生活とリサイクル
(衣服が財産ではなくなった)

タケノコ生活という言葉を聞いて、その意味が分かる世代と分からない世代ははっきりと分かれるかもしれない。自分自身その言葉を聞いたのは小学校のとき担任の先生の口から聞いた言葉であり、生活で実感することは無かった言葉である。

それは社会の授業で、第二次世界大戦中や戦後間もない頃に、都会の人は着物を田舎へ売りに行き、代わりに食料を手に入れてきたという話の時だったと思う。初めて「タケノコ生活」という言葉を聞いたとき、上手いこと言うな~と思った記憶がある。しかし、今になって思えば、この言葉には繊維製品の手に入れるまでの大変さ、その商品・製品としての寿命、衣服としてその役割を終えたときの廃棄やリサイクル、まさにその繊維製品のライフサイクルそのものを考える上で大事な事が隠れて居たのである。

実際に、自分自身が現在身につけている服は大量生産で価格も手ごろで、丈夫、着心地もいい、しかし、財産としての価値は殆どゼロに等しい。そして容易く廃棄されていってしまう。それは衣服に財産としての価値が殆どない事とも直結している。 先日リサイクルショップへ行くと、びっくりするような低価格で中古衣料が売られている。きっと買い取り価格もかなり低いのだろう。 衣服を作る技術の進歩が、相対的な価値を下げ、資源を無駄使いしていうのが現状なのだ。本来糸をつくる事から始めて織物が出来るまでの工程は大変手間が掛かり、だからこそ財産としての価値のあったのである。 (M.K)



インドの国旗
(繊維が世界を動かしている)

繊維という材料は、昔から戦略的にも重要だったのは言うまでもない。例えば養蚕技術は長い間中国で極秘に扱われ絹布という商品のみが流通し、その技術は隠されていた。 ヨーロッパで最初に綿布が紹介されたとき、羊毛しか知らなかった人たちは、羊のなる木から綿が出来ると考えられていたらしい。 そして、その先着しやすい綿は、瞬く間にヨーロッパ中で人気になり高価な値段で取り引きされ、貴族たちはそれらの獲得に奔走し、当時のフランスでは、綿着用の禁止令まで出たという。そしてその禁を破ると、死刑だったという。

それほどまでに人を魅了する繊維は、時として戦争まで起こしてしまうモノなのである。 ある海外のドキュメンタリー番組を見ていたとき、綿が欲しくて、イギリスはインドを武力で植民地にしてしまったようである。そして、インドでは綿布を織ることを禁止し、綿花栽培だけさせ自国で輸入し、作った綿布をインドに売りつけ儲けたのである。そんな状態から自ら栽培した綿を、自ら糸にし、自ら綿布にすると言うことを自分たちの手に戻そう運動したのが非暴力で有名なガンジーである。そのガンジーは、「自らの手で栽培した綿を紡ごう!」ということの象徴として「糸車」を使ったのである。そして、インドは独立後に、その象徴だった「糸車」を国旗の真ん中に描くのである。

綿は、それほどまでに人を魅了した農産物であり、その綿布の大量生産・製造技術が産業革命を押し進め、今のような工業化社会の礎となったのである。(M.K)




身近な繊維といえば、綿?麻?
(日本は麻の文化)

現代の日本人にとっては、繊維として一番最初に思い浮かぶのは綿だろう。しかしこの綿は江戸時代以降に一般化していった繊維であり、その先に遡ると繊維といえば麻が一般的だったのだ。もちろん絹も存在していたが、一般の人が利用できるような繊維素材では無かった。そのため一般に着物は麻で作られていたのだ。この綿は、下着でもシャツでもジーンズでもとても人気のある素材で、世界中で栽培されている。しかし、世界で一番農薬が使われている農産物であり、産業革命、イギリスによるインドの植民地支配、アメリカの南北戦争など、歴史とも深く関わっている材料である事も忘れてはならない。

綿花は、高温で乾燥した地域が原産であり日本のような多湿な地域では本来栽培しにくい植物なのだ。しかし江戸時代から一般化したということは、もちろん当時の日本でも綿花は栽培されていたのである。そして、江戸時代の綿花の産地は中部地方のようである。そう、戦国時代の3英傑を排出した尾張が綿花栽培の盛んな地であったのである。

そして、麻は今では夏向きの素材とか、高級な素材というイメージがあるが、本来、高温多湿の日本に適した、親しみやすい、もっともポピュラーな素材なのである。
ここ最近のクールビズには、もってこいの素材なのである。もちろん麻を用いてもデザインによっては暑く感じてしまうので、ゆったりしたデザインである必要もあるが、歴史的にみても麻をゆったり着るのが本来の日本の姿なのである。(M.K)



繊維分野の守備範囲
(天然繊維から合成繊維までシームレスに利用している分野である)

一般に産業は第1次産業から第3次産業まで分類されている。そこで「繊維」に注目してみると、シルクを作る養蚕業や綿花栽培などは第1次産業である農業に分類される。しかし、絹の製糸以降や石油を出発原料とする化学繊維は第2次産業に分類される。

しかも、衣服の販売などを考慮すると第3次産業にも関わっている。他の産業分野である電気産業や自動車産業と比較すると第1次産業と関わりの程度が相違点だろう。これは、天然由来の材料と人工的な材料の共存とも関わってくる。化学工業と違い独立して繊維工業が存在するのはこんな所に理由があるのかもしれないと考えている。

天然由来の材料と人工的な材料には、どちらにも長所、短所がある。しかし、それを組み合わせてお互いの欠点を補いあって商品を作ることが出来るのは他の産業には無い部分だと思っている。例えば、黄金の混合比として有名なのは綿/エステル=65:35が有名だろう。これは、綿の性質として吸水性や肌触りを残しつつ、ポリエステルの性質である防しわ性や洗濯の速乾性などが加わりお互いの長所を生かしつつ短所を補っているのである。こんな「しなやか」な考えが出来るのはやっぱり繊維産業だからこそなのかもしれない。そんな「しなやかさ」は、きっと日頃の生活にも必要な感覚なのだろうと思っている。


蛇は繊維なのか?(繊維とは何か?)

「繊維」と聞いて何を想像するだろうか?繊維製品としての洋服、絹糸のように細くて長い繊維、太くて丈夫なロープ、それとも食物繊維だろうか?
そんな様々な想像力を掻き立てる言葉である「繊維」はそれだけ魅力的で多様性を持っていると言えるだろう。そこで広く認知され、これなら「繊維」と思える特徴は3つあると考えられている。1つ目の特徴は細くて長いこと(直径と長さの比がおよそ1:100以上)。2つ目の特徴は、「可撓性」(フレキシビリティ)があること。3つ目の特徴は、「撚る」ことが出来ることである。

たとえば、東海道新幹線のレールは、細くて長いが、2つ目の「可撓性」から怪しくなってくる。そしてレールを「撚る」ことは難しいのである。従ってレールは繊維とよべないのである。そうなると、とぐろを巻いた蛇の集団はどうだろうか?細くて、長くて、可撓性もあり、撚れるといえば撚れそうである。

どうも判断に苦しむ状況だが、繊維の特徴の「撚ることにより物性が向上すること」を考慮すると、やはり蛇は「繊維」と分類出来ないだろう。
細くて、長くて、可撓性があり、撚る事により物性が向上するものを「繊維」とすると、遺伝子情報を含んでいるDNAも「繊維」となる。繊維学会でDNAに関する研究発表が行われているのはそんな意味もあるのだと学生時代の指導教官が言っていたことを思い出す。本当に、「繊維」とは大きなモノから小さなモノまで様々である。



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